第299章

川崎正弘がいちばん恐れていたのは、まさにこんな日だった。野呂栞の芽を摘んだつもりが、どういうわけか、水原刃のほうが本気で野呂栞に興味を持ち始めている。しかも、しつこい。終わりが見えない。

水原刃は椅子に腰かけ、指を組んだまま川崎正弘を見た。

「野呂栞、悪くないと思う。強いし、根性もある」

「強くて根性があるのは戦士だろ。野呂栞は女だ」

「話も面白い」

「おまえ、鑑賞眼どうなってんだよ。それはただのイカれっぷりだ」

「性格が単純だ」

「それはバカって言うんだ」

「野呂栞は――」

そこで水原刃はふっと口を閉じ、じっと川崎正弘を見据えた。次の瞬間、声の温度が変わる。

「……おま...

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